ダンジョン5巻よもやま話『ダンジョンクリーナー』はめっちゃ良いよねという話
※この記事は『ダンジョン飯5巻』に関するネタバレを含んでいます。
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突然ですが自分は5巻のよもやま話『ダンジョンクリーナー』が好きです。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p199 /KADOKAWA エンターブレイン)
この話、ここまで大きな規模のダンジョンの生成と維持にはとてつもない設備と金がかかる!という内容で、初見時はさらっと読み、「おそらく狂乱の魔術師はめちゃくちゃ金持ち!」というオチに違和感を感じました。
では狂乱の魔術師は「工事費」「土地代」「設備費」…などの金をどこに回すのか?誰に頼むのか?関係者がいないならこれらの仕事は自分で全て出来るのか…?と。
今まで少しずつ魔力や魔物に関する設定が明かされてきた黄金城ダンジョンが、金のかかった設備で保たれているというのは変だと。
この時点で気づいた方もいるかもしれませんが、この疑問を持つことは自然で、実際ここにあるのはいつも通りのダンジョン豆知識を披露する文脈ではありません。
この1ページ漫画でのマルシル は、「ダンジョンの構造をみんなに教えている」という風で解説をしていますが、実のところマルシルは人間の法にのっとった極端に理論的な話をしています。
これは1巻でマルシルがマンドレイクを採集する際に、犬に紐をつけて引っ張るしかない!と主張した話に通じます。
つまり狂乱の魔術師とダンジョンについての豆知識…と見せかけて、「マルシルの頭の硬さ」を語るエピソードだったという構成です。
…すごく良くないですか??
ダンジョン飯手ぬぐいの小ネタを解説していく
ダンジョン飯手ぬぐいとは、2017年8月10日発売の、ハルタ47号応募者全員サービスで貰えるグッズである…。
この手ぬぐい、ダンジョン飯の舞台となる黄金城ダンジョンの1階層〜5階層までさながらウォーリーを探せのようにさまざまなキャラが散りばめられているのですが、あまりにも小ネタが多く、いつかブログにまとめておきたいなと思っていました。
Twitterアカウント、@hartamanga より突然告知されたこの企画。1回の応募でハルタの帯が必要になるので当時はとりあえずハルタを3冊買って、1冊は諸事情で応募できず、2枚応募しました。
手ぬぐいはタテ70センチヨコ34センチのサイズで、洗濯すると色落ちしたり、ほつれそうな感じだったので普段使いするのはやめました。観賞用です。
小ネタについては箇条書きにしていきます。
1階層に関してはハルタ公式Twitter(@hartamanga)で投稿されたイラストを使用しています。
その他の階については直撮りに見やすいように白黒加工しています。
*手ぬぐいの時間軸
ライオスのパーティメンバーがバラバラに行動している、ナマリがタンス夫妻といる、1階層の死体蘇生屋が食人植物に囚われていることからおそらく本編とは無関係です。
*散りばめられたキャラ
この時点で本編に出てきている登場人物のほとんどは探して遊べるようになっています。
・蘇生所の店主
4巻で初登場する蘇生所の店主が蘇生に必要なヤギの死体を運んでいます。
酪農家と提携していて商品にできない肉を分けてもらっているのかなと推測してみたり…。
・一巻の初心者パーティ
歩き茸に全滅させられかけている超初心者パーティ。この後マルシルが杖で殴って美味しく頂きました。
・私のために争わないで!
(おそらく)回復役の魔法使いのために争う男2人。5巻のチルチャックの発言回収が見事でした。
・耳をフードで隠すマルシル
マルシルは地上にいるときはフードをかぶっている描写が多いです。エルフ耳を隠しているのでしょう。9巻の回想でもそうでしたね。
この世界にもビキニアーマーあるんです。謎防御。そしてこの店はハーフフットが店番をしています…。
・死体回収屋の裏側
回収屋の髭面トールマンが島の権力者と目線を合わせています。本編にある、「島主に隠れてうまくやってた」という話に繋がる裏設定を垣間見ることができます。
以前の記事でも触れていますが、死体回収屋の3人が話し合う最中、幻術使いの(おそらく)ハーフノームが1人だけつまらなさそうに猫を眺めています。彼は3巻、5巻と登場し最終的に殺されてしまいますが、一貫してこの違法な稼ぎ方が気に入らなかったのだと推察できます。
・嬉しそうなシュロー
シュローは花売りから花を買い頬を染めています。ファリンにプレゼントする花でしょう…。そしてそれを遠目に監視するマイヅル。
・カナリア(西のエルフ)
カナリア隊です。この頃からおそらく看守と罪人2人の設定はあったのだと思いますが、衣装などは初期デザインです。
・チルチャックのツレ
名前はないですがちょくちょく登場してるそばかす黒髪パーマのハーフフット。ライオスパーティにチルチャックを推薦した人物であることが後に明かされます。
・ドニ&フィオニル&…
2人が話題に上がりがちですが残りのメンバーは死んでいるだけで元々6人パーティ。酒場でカブルーに絡んでいた酔っ払いなど出番の少ないキャラも登場しています。
・墓を勝手に使うな
1階層は元々墓場でしたが自由に使われしまっています。おそらくこの図は墓石をベッドとして使うホームレスと墓参りにきた遺族。
こっちの墓はおそらく風俗。キャバクラ的な位置づけでしょうか。
不謹慎すぎる…。
・ニワトリに混じるバジリスク
オークが飼育している食用のニワトリに紛れ込んでいる雛。形状的に1匹だけバジリスク。
・10フィートの棒
D&Dネタ。探索に使っているのですが視界が開けてるのでシュールです。
・冒険者を追いかけるオークを追いかけるグール
魔物化した冒険者からは追いかけられる立場にあるというネタ。ハーフフットは飛び抜けて逃げ足が早いですね…。
・島主の顔を的あてに使うオーク
この世界(島?)ではオークに人権を与えられていないようで、会話ができるにもかかわらず魔物扱いされ討伐対象となっています。
・意味深に立てかけられた槍
センシの「ヤリを借りるか迷った」という発言に繋がっているのかなと思いました。
以上になります。まだまだ小ネタが溢れていると思うので、何か発見したら教えてくださると嬉しいです。
記事に問題があれば対応いたしますのでご一報ください。
第34話 コカトリス【ダンジョン飯各話考察】
みんな大好きマルシル石化回。
ギャグたっぷりですが設定の宝庫です。
※この記事はダンジョン飯第5巻とそれ以前のネタバレを含んでいます。
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第34話 コカトリス
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p143 /KADOKAWA エンターブレイン)
扉絵はライオスに魔法を教えるファリン。トーデン兄妹は成人してからは親元を離れしばらくの間二人暮らしをしています。彼らの家の中が描かれるのは4巻にあった幼少期の回想から2度目で、マジックアイテムとしてコップ、花、鳥の羽、糸、さじ、貝殻、魔術書などが置かれています。
ちなみにここでファリンが教えている雪の結晶を作る魔法は1巻4話【オムレツ】でファリンに魔法を見せるマルシルの扉絵と対になっています。
(九井諒子『ダンジョン飯(1)』p89 /KADOKAWA エンターブレイン)
冒頭からマルシルとの距離感につまづくライオス。
回復魔法は患部に直接触れる必要があるため、どうしてもコミュニケ―ションに難が生じてしまうという話題です。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p149 /KADOKAWA エンターブレイン)
この話、作中ではなく応募者全員サービスのてぬぐいでさりげなく描かれていたりします。こういうことですね。
MMOの「回復役の女性は男に囲われ姫になりがち」「恋愛がらみでパーティ解散」というあるあるとかけているようにも見えます。
(九井諒子『ダンジョン飯手ぬぐい』ハルタ応募者全員サービス /KADOKAWA エンターブレイン)
回復魔法でかさぶたがとれた!と喜ぶマルシルですが、ダンジョン飯での回復魔法は、おそらく肉体の位置を戻し人間が持つ自然治癒能力を何倍にも上げるというものなので、魔術…というよりは医学的な解釈に近いように感じます。
回復の際、傷が治るサインとして痛みやかゆみが生じるのは想像に容易いです。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p115 /KADOKAWA エンターブレイン)
黒魔術について、チルチャックがマルシルに皮肉を投げかけますが、古代魔術は禁忌とされ関わるとろくなことにならない…というチルチャック(やセンシ、ライオス)の認識とマルシルの認識の間にはかなりの差があることが繰り返し描かれています。
マルシルは古代魔術については専門的に研究してきたという発言がありますが、過去に古代魔術について研究しているという人物は今の時点でタンスしか出てきていません。
しかしタンスが古代魔術について言及している間、マルシルはダウンしていた為、二人はお互いが研究者であることを知りません。
(九井諒子『ダンジョン飯(3)』p116 /KADOKAWA エンターブレイン)
古代魔術の位置づけはダンジョン飯の根幹に関わる部分ですが、おそらくこの先も重要な情報は小出しにされていくと思われます。
古代魔術とは、「無限が存在する異次元からエネルギーを持ってくる魔術」
ここでマルシルがエネルギー力学の延長としての古代魔術を説明し始めます。魔法を物理学的に説明するのが面白いですよね。
他のファンタジーと比べても蘇生、戦闘ほかあらゆる場面でエネルギー保存の法則がつきまとうのが、ダンジョン飯のリアリティを裏付ける要因の一つになっています。
別の次元からダンジョンや魔物を作るエネルギーを持ち出すことでダンジョンを作る。古代魔術がダンジョン作りと切っても切れない関係にあることがここの説明でわかります。
(九井諒子『ダンジョン飯(3)』p64 /KADOKAWA エンターブレイン)
以下小ネタ拾い。
ライオスの魔力酔い。背景にある変な文字はひらがなで「たすけて」「しなせて」「まじゅつしを」。幽霊の声ですね。もしかすると妹のファリンが霊術に長けていることと関係があるのかもしれません。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p153 /KADOKAWA エンターブレイン)
バジリスクピット器官での体温認識。白黒ですがグラデーションでサーモグラフィー的な表現ですね。ピット器官は直後コマでのヘビのアップで口元にわかりやすく描かれています。口元に連なる小さなくぼみです。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p157 /KADOKAWA エンターブレイン)
マルシルの石化について石化してからの対策を真っ先に教えるライオスですが、石化状態よりも、石化してから砕けたときに蘇生するのが大変というのは回想ですが以前にも描かれています。知識がボケにつながるという珍しいパターン。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p23 /KADOKAWA エンターブレイン)
ライオスの指の折り方がヨーロッパ式です。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p168 /KADOKAWA エンターブレイン)
ここで挙げられている「石化を治す薬草」は1巻のバジリスクの調理の際に使ってしまっているという皮肉っぷり。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p170 /KADOKAWA エンターブレイン)
(九井諒子『ダンジョン飯(1)』p81.83 /KADOKAWA エンターブレイン)
ザワークラウト・アイスバイン共にドイツ料理。通常は豚肉で作られます。割と序盤から料理を国ごとに統一しています。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p173 /KADOKAWA エンターブレイン)
170ページに「あ、まつ毛が折れた」という台詞がありますが、よく見るとマルシルの左目のラインが薄くなっています。ここは本誌から単行本になった際の変更点。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p174 /KADOKAWA エンターブレイン)
以上、いろんな意味で面白い丁寧なギャグ回。1話の構成が美しくて好きです。
1話ごとのネタ解説もいいですが魔術や地形に絞るのもいいななんて思っています。
第30話 良薬【ダンジョン飯各話考察】
良薬口に苦し
"本当に自分のためを思ってしてくれる忠告は、ありがたいが聞くのがつらい(孔子家語)"
ギャグ少なめですがどっぷりとキャラクターと話に深入りできる好きな回です。
※この記事はダンジョン飯第5巻とそれ以前のネタバレを含んでいます。
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第30話 良薬
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p.33 /KADOKAWA エンターブレイン)
扉絵。若かりしチルチャックがスリをしているように…見えなくも無い一枚。
ダンジョン飯はダンジョンが舞台なだけあって雑踏が描かれることが滅多に無いので貴重です。ぱっと見たところ、トールマンが圧倒的に多く、ドワーフ、ノームと続いていますね。人口比率もそんなものなんでしょうか。
オークの集落に迷い込む4人。チルチャックとセンシは意識があり、マルシルは魔力不足、ライオスは意識不明。
オーク族長の妹引き連れたオークの集団と出会いますが、登場オークのデザインが少し変わっています。
ハルタ付録のデイドリームアワー2では「人間寄りのデザインにしすぎて面白くなかったと反省した」というコメントが。
(『デイドリームアワー2』ハルタ付録 p.16 /KADOKAWA エンターブレイン)
オークからみて、それぞれ特徴的な身体の部位で人種を呼び分けているのは、作者がフラットな視点でこの作品を描いているのが顕著に表れていて好きなところです。
ドワーフ→地底人
ハーフフット→小人
トールマン→足長
エルフ→耳長
とそれぞれ呼ばれています。
ダンジョン飯のパーティメンバーは各種族の言葉ではなく、共通語で会話しているという設定ですが、オークたちが話す言語は共通語なのでしょうか。
ゾン族長の妹はセンシたちと自然に会話しています。しかし2巻のオークとの邂逅を見返しても、ゾンとその妹がセンシたちと会話しているシーンはありますが、他のオークを交えた会話はありません。
唯一あるのがゾンの息子にマルシルが話しかけるシーンです。
(九井諒子『ダンジョン飯(2)』p.51 /KADOKAWA エンターブレイン)
オークは炎竜討伐後風呂に入り体を洗ったことで、薄くなっていたセンシの匂いに気づき、センシが今まで交流していた野菜売りだとわかります。
このシーンは2巻【オーク】と同じ流れで、センシの顔がオークの間ではかなり通っていることがわかります。
(九井諒子『ダンジョン飯(2)』p.38 /KADOKAWA エンターブレイン)
ゾンの妹は「族長に代わって礼を言う」とオーク流の処置でライオスとマルシルに薬を与えた後、オークの妹から炎竜は狂乱の魔術師が直接使役していた魔物の一体だと教えられ、なぜ狂乱の魔術師に目をつけられたのかがここで明らかになります。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p.9 /KADOKAWA エンターブレイン)
…ということはもし冒頭で炎竜を倒していたら、どちらにしても狂乱の魔術師に狙われていたということです。
過去にもこのようなことがあり、目をつけられて生還したパーティはないとの話で…、咄嗟の判断で攻撃をしのいで4人とも生き延びたライオスパーティがいかに優秀であるかがわかります。
チルチャックはファリンを助けることを諦め、嘘をついてでも全員で地上に戻ったほうがいいと話をしますが、ゾンの妹はその発言に嫌悪感を示します。
センシを「友」と呼ぶ族長、「お前の頼みなら仕方ない」と要望を受け入れる妹を見ると、ダンジョンのオークはとても義理堅い性質の種族のように描かれています。
対照的にハーフフットは信用がなく金にがめつい種族だという描写が多いです。(おそらくこれがさらに掘り下げられ、ハーフフットは偏見に苦労しているという設定に行きついています。)
この汚いものを見るような目
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p.42 /KADOKAWA エンターブレイン)
チルチャックはライオスの行動を「ぞっとした」と評していますが、連載最初期から一貫して出来るだけリスクを最小限に抑え(特に仲間の負傷・死亡を避けて)行動することが最善だと考えているように見えます。チルチャック当人は利己的というよりは堅実な性格で、自分と仲間の命ためならば嘘をも厭いません。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p.28, 『ダンジョン飯(1)』p.127 /KADOKAWA エンターブレイン)
狂乱の魔術師登場で置きっ放しにしていたカエルスーツや衣服、荷物を回収。この後ライオスとマルシルの服装が戻っています。
オークは日常的に魔物を食べているようで、「炎竜を食べた」という話にゾンの妹は「倒した者の特権」と反応しています。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p.50 /KADOKAWA エンターブレイン)
「俺は臆病だし自分の命が一番大事だからな」というチルチャックの言葉を嘘と見抜くゾンの妹。今まで出てきたキャラクターの中でも特に人に対する洞察力が鋭いです。
「竜を食べた」と語ったときのチルチャックの愛おしそうな表情を見ると仲間に対して情が薄い印象はなかなか持てないでしょうね。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p.50 /KADOKAWA エンターブレイン)
チルチャックの説得後、調味料が足りないので地上に戻りたいと切り出すセンシ。
ちょうど2巻8話【キャベツ煮】で調味料が不足するのが1ヶ月、30日とすると4人で約1週間換算となり、ちょうどセンシと出会ってから調味料が無くなる頃合いになっています。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p.57, 『ダンジョン飯(2)』p.8 /KADOKAWA エンターブレイン)
ところで、2巻9話【オーク】で、ライオスの「炎竜の出た集落の場所を教えて欲しい」という求めに対して、ゾン族長が集落の場所を教える場面。
ゾン族長の妹が登場したことにより、この当時彼にも大切な妹がいたことがわかり、何故少しの沈黙ののちライオスに教えたのか、「炎竜を安全に倒してもらう」という打算的な考え以外にも共感するところがあったのかもしれない、と考える余地が増えシーンの深みが増しています。
(九井諒子『ダンジョン飯(2)』p.53 /KADOKAWA エンターブレイン)
以上、30話はオークの再登場を通じて9話との繋がりが深く、今まで小出しにしてきた設定を活かして話を掘り下げつつまとめるというテクニカルな回です。
炎竜の身体がなくなっている、ケン助の不自然なアップ、と今後に繋がりそうな伏線も散りばめられているので今後も何度か読み返すことになりそうです。
第29話 炎竜7【ダンジョン飯各話考察】
29話は今までの伏線を少しずつ回収しながら話が大きく転換します。ここから始まる新展開、じっくり楽しみましょう。
※この記事はダンジョン飯第5巻とそれ以前のネタバレを含んでいます。
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第29話 炎竜7
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p.6 /KADOKAWA エンターブレイン)
5巻表紙のファリンは操られたように徘徊し、魔術をかけられたのち冒頭からパーティ離脱します。
左目から血を流すファリン。4巻の伏線とつながります。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p.17 /KADOKAWA エンターブレイン)
チルチャックがナイフを刺した左目。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.93 /KADOKAWA エンターブレイン)
更に、ファリンが手に持った途端逃げるケン助。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.172 /KADOKAWA エンターブレイン)
異常なほどの魔力増幅。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.161 /KADOKAWA エンターブレイン)
4巻のさり気ない描写と一気に繋がります。
ファリンは黒エルフが使役する炎竜と魂が混ざり人格が別の人物になっています。
4巻27話【炎竜6】でのマルシルの「迷宮に魂が縛られるのは人だけ」という発言と、デルガルを慕うような発言からこの炎竜はもともと人であったのではないかと個人的には推察しています。
ちなみにライオスが刺した逆鱗…これが喉の傷と対応しているかは断言できない微妙なラインで留められています。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.101,p.149/KADOKAWA エンターブレイン)
幽霊の手を振り払うファリン。ファリンが誘い出されるのを幽霊たちはあきらかに意思を持って止めているように見えます。
黒エルフ登場時にマルシルが「子供…!?」と驚くシーンがあります。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p.16 /KADOKAWA エンターブレイン)
ダンジョン飯では種族間の年齢には基本的に理解がないことが多く、センシがチルチャックのことを子供呼ばわりしたり、ナマリがトールマンの年齢なんてわかるか!と怒るシーンがありました。
同じ種族でないと「年齢は全く推測出来ない」ということは、この漫画では一貫して描写されています。
ここではエルフのマルシルのみが見た目でこの黒エルフを子供だと判断しています。
しかしこの2巻で出てきた黒エルフ、どうも怪しいキャラです。
話中で出てくるデルガルの過去であろう絵画の世界で、時を超えて登場しています。
見た目はほぼ変わらず。ライオス、エルフ共に絵画の中の記憶もあります。黒エルフが絵の世界に身体を封印しているのか、はたまたトールマン何世代分も生きているのか。
作中でエルフの寿命についてはまだ触れられていないため、ハッキリとはわかりません。
(九井諒子『ダンジョン飯(2)』p.126 /KADOKAWA エンターブレイン)
そしてよく見るとこの手。このシワ。
明らかに普通の時間軸で生きていないように見えます。身体を若く保つ魔術でしょうか。それとも幻影の魔術の類でしょうか。
また非常に気になるポイント。狂乱の魔術師と書かれてはいますが、これは他者によって明言されたものではなく、どうも真実を隠されているような気がしてなりません。
(追記:後の巻より判明、狂乱の魔術師で間違い無いようです。)
黄金城はデルガルのもの。
黒エルフは「簒奪者が」とライオス達に憎しみを込めた目を向けます。
この黒エルフ、マルシルが使うのを躊躇っていた古代魔術を当然のように使います。
ここで細かい描写について。
マルシルは古代魔術を使う際、自分の血を触媒のように使います。蘇生のシーンでも自分の手のひらを切り血を使いましたが、今回は小さな竜に顔を切られ、頬を伝う血を拭う動作をしてから詠唱へと移っています。古代魔術固有のルールの可能性が高いです。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.132 ,『ダンジョン飯(5)』p.20 /KADOKAWA エンターブレイン)
マルシルが黒魔術で小さなドラゴンの魔術を解除し、一度攻撃をしのぎますが、床が割れ、迫る壁の中でライオスたちは逃げ場を失います。
こちら、元ネタがあります。ウィザードリィで罠にかかるとまれに行けないはずである壁の中にワープして、死亡状態になってしまうという仕様です。
いしのなかにいる - ニコ百 http://dic.nicovideo.jp/id/4313048
迫る壁の中で奮闘するライオス一行の行動、
センシは力任せに壁を押す、
チルチャックは仕掛けがないか探り出口を見つけようとする、
マルシルは杖とレッグプレスを使って壁を押す
…といったように各自個性が出ています。
(九井諒子『ダンジョン飯(5)』p.28 /KADOKAWA エンターブレイン)
急に壁に穴が空き、別部屋に移動するシーンですが、このシーン…2巻にある動く絵画に見覚えがあるような印象を受けます…。
以上、29話でざっと気になるところをまとめてみました。1回読んだだけでは気づかない細かい描き込みがたくさんあり、とにかくものすごい密度です。
5巻は全体的に話のつながりが多く他の巻と比べても濃い話が多く読み応えがあるので是非是非読み返して新たな発見をしましょう!
第28話 炎竜6【ダンジョン飯各話考察】
※この記事はダンジョン飯第4巻とそれ以前のネタバレを含んでいます。
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第28話 炎竜6
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.147 /KADOKAWA エンターブレイン)
炎竜を倒しファリン復活、ファリンとマルシルのお風呂シーンから入ります。
一見読者に向けたサービスシーンに見えますが、このシーンの何気ないやり取りの中には後のストーリーにつながる細かい伏線が満載です。
・浴場の小ネタ
浴場の背景にある羽の生えたライオンのモチーフは、1巻から4巻に至るまでダンジョン内の至る所で見られるものです。黄金城のシンボルマークでしょうか。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.148 /KADOKAWA エンターブレイン)
2巻14話【ケルピー】で使った石鹸。
石鹸はセンシの髭を洗うために使ったものの残りですね。
(九井諒子『ダンジョン飯(2)』p.178 /KADOKAWA エンターブレイン)
・マルシルの古代魔術とファリン
子供の頃転んで出来た傷のエピソードで、ファリン本人の記憶が戻っていることをはっきりさせつつ、以前より魔力が増幅しているということを描写しています。
ちなみにダンジョン飯では、魔力切れの表現として目の下にくまが描かれますが、ファリンの魔力供給によってマルシルの魔力が回復したことがわかります。魔力が不足するのは2度目で、18話【焼肉】ではウンディーネを飲んで魔力切れを回復させています。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.150 /KADOKAWA エンターブレイン)
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.151 /KADOKAWA エンターブレイン)
また、マルシルの学生時代の専攻である古代魔術について、長い付き合いのファリンですら全く知らないという点も明らかになります。
ここでマルシルが古代魔術について全く触れなかったのは、ファリンが古代魔術によって蘇生されたことを後ろめたく思ってほしくなかったからかもしれません。
・地下四階層からの帰り道について
チルチャックは炎竜との戦闘前に見つけた、オークのワインを早速開栓して飲みながら会話しています。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.44 /KADOKAWA エンターブレイン)
帰り道にオークの抜け穴が使えないのは、4巻よもやま話であるように、カエルスーツが乾くと毒手を通さない粘液がなくなり、効果がなくなってしまうためです。
マルシルと古代魔術について言及されるシーンがあります。
「妙だと思ってたんだ」「生活に困ってる風でもないエルフが迷宮に潜るなんて」というチルチャックの台詞からもわかるように、エルフの冒険者は基本的に迷宮に潜ることはほとんどないようです。マルシルの古代魔術専攻というものが如何に特異な学問かということがここでわかります。
チルチャックと話をしながら足をかくライオス。回復を得意としない(しかし早い)マルシルによる応急手当てのため、結合部分は完治していません。
・燃料引火と炎竜料理
竜のそばで料理をしようとするセンシを追いかける4人。走ると順に抜かされていくマルシルの身体能力の低さが描かれています。毎回仕込んでますね。芸が細かい。
相性もなくその場で強力な防御魔法を使ったファリンの異変は明確な伏線です。
ダンジョン飯に欠かせないセンシのお料理タイム。
五階到達時オークの野営地から手に入れた大量の小麦粉を使い、炎竜の体内をピザ釜に見たててピザを作ります。
合間に男性陣も風呂に入りますが、普段風呂に入らないセンシはあまり気が乗らないようで、嫌々入っています。
ファリンを食べた炎竜を食べるという状況に戸惑う3人ですが、現実世界では人を食った動物を食い返すというシチュエーションがそうそうないため、なんとなく嫌悪の感覚が想像しづらいです。友人の肉を食った熊を狩って食べる、と想像するとなかなかに抵抗がありますが…。
1話のギャグをここに来てようやく回収。
(九井諒子『ダンジョン飯(1)』p.39 /KADOKAWA エンターブレイン)
「大体なぜ他の生物で竜の味を表現する必要がある!? これが 竜の味なんだ」
ライオスは竜に対しては特別な感情を持っていることが巻末よもやま話でも語られています。これは竜に限らずオタクあるあるですよね。
ほへ〜と反応するファリン、ここは直前のライオスとおそらく意図的に似せており血の繋がりを感じます。
ケン助をそっと出すライオス。独断での行動は信頼を失う、とチルチャックが怒ります。チルチャックは「ハーフフットは信用できない」という偏見と差別を受けながら育ってきたにも関わらず(寧ろ偏見と差別があったからこその性格なのかもしれませんが)、誰よりも責任感が強く信用を大切にしています。こういったハーフフットは実際珍しく、種族の中でも変わり者と言われているようです。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.172 /KADOKAWA エンターブレイン)
食事終了、寝床の準備。
片付けや準備のシーンを丁寧に描くことで生活感が生まれ、これがダンジョン飯の見どころでもあると思っています。
泊まる民家は扉は沢山あるのに外に繋がるのは2つだけ、便所が7つ。こんなどうでもいい情報でもあとから生きてくるのがすごいところ。
・親友と兄妹
幽霊とコンタクトを取っているファリンとライオスの会話。何と話してたの?幽霊がいたの?とあえて聞き返さないのが良いですよね。
この二人でないと成り立たない異質な会話です。多く語らせず関係性を表現するのが巧みだと感じるシーンです。
「あの頃より私 ずいぶん大きくなっちゃった」
「何を生意気な!私の中じゃまだまだちびすけのままだからね」
この会話、一見ほほえましい親友同士のやり取りに見えますが、身体的成長が遅く時間感覚も異なるエルフのマルシルが、トールマンであるファリンの成長を実感できていないという風にも解釈できます。
人間がペットの身体年齢を見た目で把握できないように、マルシルもファリンの寿命を把握できていないのではないでしょうか。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.176 /KADOKAWA エンターブレイン)
ファリンとライオスの会話では、はじめてライオスが口調を崩し、怒りを露わにするシーンがあります。ライオスに関してシリアスな場面もあまりなかったので、兄としての表情を見せるライオスはとても印象的です。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.177 /KADOKAWA エンターブレイン)
そしてラストに出てきた褐色のエルフ。
どこかで見覚えがあるはず。そう、2巻12話【宮廷料理】で登場した絵の中のエルフです。どうやら絵の中の世界の人物ではないようで。
(九井諒子『ダンジョン飯(2)』p.125 /KADOKAWA エンターブレイン)
4巻のラストで物語は一区切り、新章へと進みます。
第22話 地上にて 【ダンジョン飯各話考察】
※この記事はダンジョン飯第4巻とそれ以前のネタバレを含んでいます。
物語を最大限に楽しむために、掲載分を読んでいない方はブラウザバックを推奨します。
4巻を持ってる方は是非、単行本を片手に…こういう捉え方もあるのかーという気持ちで目を通してくださると嬉しいです。
交流させていただいているファンの意見を参考に穴埋めをしている部分もあります。気づいた点などありましたらコメントをいただけると嬉しいです。
第22話 地上にて
主人公の出番はなく、ほぼタンスパーティ(タンス夫妻、キキ、カカ、ナマリ)しか登場しない回ですが、とにかく情報量が多いです。
ダンジョン飯の世界観を深める重要な回…ということで思ったことを思った通りに、少しの感想も入れつつ、まとめてみました。
•島の地図から読み取れること
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.5 /KADOKAWA エンターブレイン)
扉絵で、舞台となる島の地図がはじめて描かれます。
『島…ドワーフ、エルフ、トールマンと様々なその時代の所有者にあらゆる名で呼ばれてきた。今ではその殆どが風化し。ただの「島」と呼ばれている。
メリニ村…漁業を営む小さな村だった。迷宮が発見されて大きく変わってしまった。
大通り…冒険に必要な道具や食糧はここで買い揃える。
迷宮入り口…村の地下墓地から繋がっている。墓としてはもう機能していない。』
今回の舞台となっている黄金城の迷宮は、村の地下墓地からつながっていることが公開されています。「墓としてはもう機能していない」というのは1巻第1話で描かれている通りですね。
扉絵に本編で描ききれない設定を小出しにするのは、ダンジョン飯の特徴でもあります。細かいところもできる限り拾っていきたいです。
•ナマリ達の帰還
地下から帰還魔法を使って戻ってきたタンス一行。ナマリは魔力酔いで気分が悪くなりキキカカに介抱されます。
ドワーフであるナマリにのみ症状があり、ノームとトールマンであるタンス夫妻とキキカカは平気なのは4巻よもやま話(巻末オマケ漫画)にある魔力のキャパシティの話に繋がります。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p184 /KADOKAWA エンターブレイン)
マルシル曰く、魔力容量の多いエルフやノームに対して、センシやナマリ等のドワーフは特に魔力容量が少ない種族だそうで。嘔吐などの症状が起こるようです。乗り物酔いと近いイメージでしょうか。
•迷宮の出現で変わった島
タンス氏は迷宮から見つかる黄金や宝などから島が裕福になったことについて触れています。
1巻6話【動く鎧1】でのライオスの回想にもあったように、数年前までは金剥ぎの一団として冒険者が迷宮に金を取りに行くことが頻繁にあり、資源としての価値は高いことがわかります。
(九井諒子『ダンジョン飯(1)』p.140 /KADOKAWA エンターブレイン)
タンスがこぼした「わしにはあの黄金は虫を誘う蜜のように思えるがね…」
この含みのある台詞もなんとなく印象に残ります。後のストーリーに関わってくるのでしょうか。
•迷宮の経済的影響
ここで新キャラクター『島主』が登場します。40~50代くらいに見えるトールマン。ドワーフに対して「忌々しい」「まるでもぐらだ」と人種差別とも取れる発言をしています。
島主により、過去にドワーフ(とノーム)の軍勢とエルフの軍勢で戦争が起こり、島を巡って争ったという過去が明らかになります。
タンスの報告で、迷宮内に無法者が増えた、オークが浅層に現れるようになったとありますが、2巻でライオス達が見た通りの正確な報告です。
(九井諒子『ダンジョン飯(2)』p.33 /KADOKAWA エンターブレイン)
ここからの展開を簡単にまとめてみます。
『最近、西に住むエルフから「迷宮を返上しろ」と文が届いた。
島主はエルフ達の目的は迷宮に眠る財宝だと考えていたが、タンス氏は、迷宮にかかった不死の術こそがエルフたちの目的だと言葉を荒げる。
迷宮のあちこちに描かれた魔法陣はエルフ言語であり、迷宮の支配者がエルフであることを裏付ける要因となっている。迷宮の返還を迫るエルフにとっては有利な状況。
タンスは一刻も早く迷宮の設計図を手に入れなければならないと言う。』
西のエルフは後に物語の鍵を握る重要なキャラとして出てくると予想されます。
RPGでは一般的に、ダンジョンは魔物が溢れる危険なものであるという認識であることが多いですが、ダンジョン飯の世界では、ダンジョンは危険ではあるが国の資産のようなものとして扱われており、設定としては非常に珍しいと感じます。
•ナマリとキキとカカ
タンスの率いるパーティにいる、ナマリ(ドワーフ)、キキ(トールマン)、カカ(トールマン)。ナマリがこの2人に出会ってから1週間程度…ですが、お互い気を遣いつつも信頼を築いていこうとする関係性が見て取れます。
キキとカカは幼い頃にタンス夫妻が酒場で拾い、養子として大切に育ててきた過去があります。(ハルタ付録デイドリームアワー2より)
元々は「かかかか」「きききき」という名前だったそうですが、これはサブアカウントとして適当な名前で作られ、初期装備を剥いで酒場に放置された所謂捨てアカウントですね。
ナマリは「ちょっと用事」と一言声をかけ、向かった先は蘇生所。ここで少し距離を空けて付いてくるキキとカカ。
蘇生所のある場所は蘇生所のある場所は迷宮近くの寺院の地下。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.19 /KADOKAWA エンターブレイン)
作中では語られていませんが、ここは正確に言うとダンジョン内(魔力が満ちる場所)なのだと思われます。魂が縛られる呪いはこの迷宮内でしか効力がないので、地上に遺体を持ち出すことは出来ません。
おそらく迷宮から横穴のようなもので繋がっており、直接遺体が運び出せるようになっていると推測されます。
蘇生所の主人はナマリに会うなり「お前ライオスのところ抜けたって本当か」と声をかけます。
ナマリと蘇生所の主はそこそこ親しいようです。
ナマリがライオスのパーティを抜けて、はじめて蘇生所に足を運んだのは、マルシルとの会話をがあったせいなのかもしれません。
(九井諒子『ダンジョン飯(3)』p.161 /KADOKAWA エンターブレイン)
ここでキキとカカは蘇生所を利用したことがないと明かし、ナマリが2人に説明を始めます。
•蘇生魔法の仕組み
刺し傷、切り傷を治すのは簡単、身体の1/13を失ったり、炭化したりすると蘇生率がグンと下がる。
(九井諒子『ダンジョン飯(4)』p.21 /KADOKAWA エンターブレイン)
『蘇生には成功率があり、失敗すると蘇生不可になってしまうので、蘇生確率の高い腕の良い魔術師が来るまで損傷の激しい死体は放置される。』
3巻第19話【テンタクルス】でナマリが頭部を撃ち抜かれて死亡した際の蘇生の仕方、優秀な治療師であるタンスの発言を見ると、蘇生=治療魔術であり、身体を生命活動のできる状態にさえ戻すことさえ出来れば、魂を身体に戻すことで生き返るのではないかと考えられます。
(九井諒子『ダンジョン飯(3)』p.116 /KADOKAWA エンターブレイン)
回復魔法を使える魔法使いは蘇生術も使えるということです。
この世界だから成り立つ、蘇生魔術は回復魔法の延長であるという考え方はダンジョン飯特有の設定で、とても面白いです。
•死の恐怖を忘れるな
体への痛み、負担はあるとはいえ、死亡しても何度でも生き返るこの世界に慣れてしまうと、死ぬことに対して抵抗がなくなります。この話では「蘇生不可能・蘇生困難になる場合」を挙げ、いつ生き返れなくなるかわからない、決して恐怖は忘れてはいけないとナマリの台詞で釘をさすことで読者に対しても死への緊張感を高めています。
以前、タンスの身代わりに殺されたナマリが激昂していたのもこのシーンから理解できます。
(九井諒子『ダンジョン飯(3)』p.115 /KADOKAWA エンターブレイン)
ダンジョン飯の世界が決してライトな世界観ではないことがわかる重要な会話です。
•チルチャック以来の年齢公開
ナマリは61歳、キキカカは20歳、タンス主人210歳、タンス夫人204歳。チルチャック29歳以来初めての年齢公開です。果たしていまだ年齢が明かされていない主人公は何歳なのか…。
キキとカカは20歳にしては大人の色気がありますよね。見た目はどちらかというとアジア系の黒人に見えます。女性がキキ、男性がカカです。
•ナマリの噂
蘇生所の主人も知っていましたが、酒場でもナマリがライオスのパーティを抜けたことが一週間程度で広まっているのがわかります。このシーンは3巻第20話【シチュー】でチルチャックが言及していた冒険者同士の噂事情と繋がります。
(九井諒子『ダンジョン飯(3)』p.143 /KADOKAWA エンターブレイン)
各話との細かいつながりが非常に多いことがわかります。
以上、ゆるく考察と感想でした。
ツイッターの延長のようなノリでグダグダと語ってしまいすみません。ダンジョン飯の各話について掘り下げた記事がないので、自分用としても時々このような記事を書いていきたいと思います。
最後まで付き合っていただきありがとうございました。